前回、前々回と2回に分けて、成人男性と成人女性の握力の平均についてお伝えしてきたわけですが、そこで一つ気になる発見がありました。
それは成人男性、成人女性共に年齢の若い世代については握力の平均値が低下傾向にあり、逆に年齢の高い世代については上昇傾向にあるということです。
この傾向は、さらに年齢が上の世代、すなわち高齢者についてもあてはまるものなのでしょうか?
そこで今回は、この疑問を解消するべく、高齢者の握力の平均について調べてみたいと思います。
以下、高齢者の握力について様々な角度から検討していきますので、興味のある方は是非とも最後までお付き合いください。
それでは、早速、行ってみましょう。
今どきの高齢者の平均握力は?
それでは高齢者の握力の平均について、男女別にお伝えしていきますね。
まずは男性編です。
年代 | 男性の握力の平均(令和2年度) |
---|---|
65歳~69歳 | 39.70キロ |
70歳~74歳 | 38.39キロ |
75歳~79歳 | 35.20キロ |
上記と同じ調査で最も握力の平均値が高かった年齢層は30歳~34歳で46.35キロでした。
つまり、最も平均握力の高い世代と比べても、65歳~69歳で6.65キロ、調査対象のうち最も高い年齢層である75歳~79歳でさえも11.15キロしか平均握力の差がないことになります。
若い世代と高齢者の平均握力の差はそれほど大きなものではないのですね。
少し意外な感じがします。
それでは次に女性について見てみましょう。
年代 | 女性の握力の平均(令和2年度) |
---|---|
65歳~69歳 | 25.09キロ |
70歳~74歳 | 23.91キロ |
75歳~79歳 | 22.58キロ |
同調査では女性の場合も平均握力が最も高かったのは30歳~34歳の28.76キロでした。
したがって、 65歳~69歳で 3.67キロ、75歳~79歳でさえも6.18キロしか握力の平均差がないということになります。
調査結果を見る限り、特に65歳~69歳の女性については、自分の握力の衰えなど、ほとんど感じていないぐらいかもしれませんね。
今どきの高齢者の握力の平均は男女ともに若い世代の握力の平均と比べても、それほど大きな差があるわけではないと結論付けることができそうです。
高齢者の握力の平均、昔と比べると?
次に高齢者の握力の平均の変化傾向を知るべく、少し前の高齢者の握力の平均と比較してみましょう。
ここでは政府が運営する統計データサイト、e-Statで公開されている最も古いデータ、 平成11年度体力・運動能力調査 における高齢者の握力の平均と比較することと致します。
まずは男性編です。
年代 | 男性の握力の平均(平成11年度) |
---|---|
65歳~69歳 | 38.40キロ |
70歳~74歳 | 36.35キロ |
75歳~79歳 | 33.08キロ |
両調査結果を比較すると令和2年度の方が65歳以降の全年代において1キロ~2キロ程度、握力の平均が上昇していることがわかります。
20代~40代前半の年齢層においては令和2年度の方が3キロ~5キロ程度、握力の平均が低下していることを考えると驚くべき結果と言えるかもしれません。
では、次に女性について見て参りましょう。
年代 | 女性の握力の平均(平成11年度) |
---|---|
65歳~69歳 | 24.46キロ |
70歳~74歳 | 22.70キロ |
75歳~79歳 | 21.07キロ |
女性についても 令和2年度の方が65歳以降の全年代において 0.6キロ~1.5キロ程度、平均握力が上昇していることになります。
女性の場合、20代から50代の全年齢層において、令和2年度の方が握力の平均が低下しており、その点を踏まえれば、これもまた驚くべき結果と言えるでしょう。
若い世代の握力の平均がダウンしている一方で高齢者の握力の平均はアップしているんだね。若い世代は、もう少し、頑張らないといけないね。
うーん、どうだろう。私はそんなに単純な話じゃない気がする。
どういうこと?
今って、平均寿命がどんどん延びているわけでしょ。だったら、若い間の一時期に、すごく握力が強いより、人生のうちのより長い期間、握力が一定水準以上にある方が合理的じゃない?人間の寿命が延びていることに応じての適正進化みたいなものなのかも。
なるほど、そういう捉え方もあるのか。さすがはリケジョ。あったまいい!
運動部に所属している人とそうでない人の差は?
それでは次に運動部やスポーツクラブに所属している人とそうでない人の平均握力の差を確認してみましょう。
まずは男性編です。
男性編 年代 | 運動部等に所属している | 運動部に所属していない |
---|---|---|
65歳~69歳 | 40.44キロ | 39.50キロ |
70歳~74歳 | 37.92キロ | 38.82キロ |
75歳~79歳 | 35.54キロ | 34.99キロ |
65歳~69歳、75歳~79歳では運動部等に所属している人の方が平均握力が上回っていますが、70歳~74歳では逆に運動部等に所属していない人の方が平均握力が上回っています。
この結果だけで何らかの結論を得るのは難しそうですね。
それでは続いて女性について見てみましょう。
女性編 年代 | 運動部等に所属している | 運動部に所属していない |
---|---|---|
65歳~69歳 | 25.49キロ | 24.63キロ |
70歳~74歳 | 23.91キロ | 23.82キロ |
75歳~79歳 | 23.32キロ | 21.93キロ |
女性の場合、65歳以降の全年代で運動部等に所属している人の方が平均握力が上回っています。
特にその差が大きいのが75歳~79歳で運動部等に所属してい人の方が1.4キロほども平均握力が上回っていることになります。
男女合わせて6つの区分のうち、5つの区分で運動部等に所属している人の握力の平均が上回っているわけですから、全体としては高齢者についても運動部等に所属している人の方が握力の平均が高い傾向にあると結論付けることができそうです。
70歳~74歳の男性の結果については標本数(調査に参加した人数)の少なさが影響しているのかもしれないね。
私もたぶん、そうだと思う。定期的に運動する機会があることが握力低下につながるとは、さすがに考えにくいもの。
平均握力との差がわかる計算フォーム
ご自身の握力と平均握力の差を把握できる計算フォームを用意しました。
計算フォームは男女別、年代別となっていますので、自分の性別、年代に合ったものを選んでご利用になって下さい。
簡単にできる握力強化方法
上記計算フォームを利用してみて、握力の平均との差があまりに大きかった方は、少し握力をきたえた方が良いでしょう。
以下に簡単にできる握力強化方法を解説した動画を紹介しておきますので、握力強化の必要性を感じた方は是非とも参考になさって下さい。
まずは既にかなり握力が弱くなってしまっている方向けの動画です。
現状、ペットボトルのふたを開けるのも大変だと感じている方は、こちらの動画からチェックして下さい。
次にそれほど握力が弱くなってしまっているわけではないけれど、平均以上を目指したいという方向けの動画です。
難しい言葉を使わずに、分かりやすく解説してくれています。
まとめ
- 男性高齢者の握力の平均は60代後半で39.70キロ、70代前半で38.39キロ、70代後半で35.20キロ。
女性高齢者の握力の平均は60代後半で25.09キロ、70代前半で23.91キロ、70代後半で22.58キロ。
男女ともに最も握力の平均値が高い30代前半と比べても意外と低下幅は小さい。 - 令和2年度と平成11年度の体力調査の結果を比較すると高齢者は男女ともに令和2年度の方が握力の平均値がアップしている。
- 高齢者についても運動部等に所属している人とでそうでない人では、前者の方が平均握力が高い傾向にあると言える。
いずれにしても高齢者の握力が上昇傾向にあるというのは、いいことだよね。いくら長生きできても自分のことを自分でできないほど体力が衰えてしまっては、生きる喜びも半減しちゃうもの。
うん、あっこちゃんの言う通りだと思うよ。でもそのためには若いうちから意識的に握力を含めた体力の維持・向上に努める必要があるよね。何もかもが便利になった今のような時代には、そういう意識がないと、どんどん体力が衰えてしまうことになるもんね。
ちなみに他の平均についてもあれこれ記事にしていますので、合わせてチェックしてみて下さいね。
⇒色んな平均の記事一覧