以前、千葉県在住のある友人から、こんな質問を受けたことがあります。
「関西の芸人さんって、「いきってる」っていう言い方以外にも「いちびる」とか、「いちびってる」とか言うじゃん。
あれって意味は同じなの?違うの?
何か、同じような場面でいきってるとか、いちびってるとか、言ってるような気がするんだけど。」
なるほど、この疑問はごもっとも。
たしかに関西の芸人は相手を非難する時に「お前、いきんなや」とも「お前、いちびんなや」とも言ってますが関西以外の人からすると、両者の意味の違いはよくわからないかもしれません。
そこで今回は関西以外の人にも「いきってる」と「いちびる」の意味の違いを明確におわかり頂けるように「いちびる」という言葉の意味を解説していきたいと思います。
(いきってるという言葉の意味については、前回の記事で解説していますので、そちらをご参照ください。)
例文などを用いつつ、なるべくスッキリと理解して頂けるよう、説明して参りますので、関西芸人のトークの面白さを100%、味わい尽くしたいという方は是非、最後までお付き合い下さい。
それでは、いざ本題へ。
※いきってる(いきる)の意味を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関西人が日常的に使う言葉「いきってる」の意味について関西弁ネイティブがお伝えしています。さらに「いきってる」という言葉の使い方についても豊富な例文を用いて詳しく解説していますので興味のある方は是非、一度、ご覧になって下さい。
言われてみれば、いきってるといちびってるの違いって、よくわかってないかも。
いちびるの意味は?
「いちびる」とは調子に乗って大はしゃぎすることを意味します。
おっちょこちょいの子供などは、人が大勢、集まる場所などでは興奮して、いつも以上に大騒ぎしたりすることがあるじゃないですか。
ああいう状態のことをまさに「いちびる」とか「いちびってる」などと表現することになるわけです。
前回、紹介した「いきってる(いきる)」とは調子に乗るという意味は一致するのですが、調子に乗る方向性が異なってきます。
「いきってる」の場合は「調子の乗っていい格好をする」。
これに対して「いちびる」の場合は「調子に乗って、悪ふざけや大はしゃぎをする」。
こういった意味の違いがあるということです。
いちびるの語源は?
いちびるの意味の理解を深めるべく、その語源について確認しておきたいと思います。
いちびるの語源は「市振る」から来ています。
魚市場の競りなどでは、日々、わーわー、騒がしくしながら、取引を行っていますよね。
その様子を「市振る」と言ったらしいのですが、そこから転じて「わーわ―騒がしくいう者」のことを「いちびり」というようになったんだとか。
この話は、いちびるという言葉を普段から使っている関西人でも、ほとんど知らないと思います。
関西人と話す機会があったら是非、教えてあげて下さいね。
きっと「まじで?知らんかったわ」と感心されることになるはずです。
へー、そうなんだ。
今度、関西出身の友達に話してみよおうっと。
例文でいちびるの使い方を完全マスター
それでは「いちびる」という言葉の意味をしっかりと理解し、さらに使いこなせるようになることを目指すべく、いちびるを使った例文を確認していきましょう。
各例文には標準語訳もつけていますので、そちらも参考になさって下さい。
こら、いちびんな。
(標準語訳:こら、大はしゃぎするな。)
大人が悪ふざけをする子供を叱る時の言い方。
わんぱく盛りの男の子がいる家では一日、一度は使われそうなセリフです。
こんなとこでいちびとったらケガするよ。
(標準語訳:こんなところで、悪ふざけしてたらケガするよ。)
子供を叱る時の言い方、やや、やさしい、おばさんバージョン。
たとえば交通量の多い道などで子供がふざけている場面に遭遇したら、こういう言い方で注意します。
お前、なんぼなんでも、いちびりすぎやろ。
(標準語訳:君はいくらなんでも、悪ふざけしすぎですよ。)
相手の心情や状況などを読まずに悪ふざけが過ぎると、こういう注意を受けることに。
ちなみに関西人、特に大阪人は、こういういちびりが、他の都道府県に比べて多いように感じます。
逆にいきりはやや少ないかも。
いい格好をするより、笑いをとりたい人種なので。
悪い奴やないんやけど、あいつはほんまに、いちびりやからなあ。
(標準語訳:悪い奴ではないんだけど、彼は本当に調子に乗って、悪ふざけが過ぎてしまうところがあるからなあ。)
大阪でよく耳にしそうな人物評。
いちびるというのは、周りを喜ばせたい、楽しませたいというサービス精神が行き過ぎたものになった結果の行動とも言える。
そのためか、「悪い奴やないんけど」といったニュアンスの言葉とワンセットで使われることが多いような気がします。
※「いちびり」を含めた関西弁の悪口について、こちらの記事でまとめて紹介しています。興味のある方は合わせてチェックしてみて下さい。
関西弁の悪口一覧を掲載しています。関西弁歴半世紀の大阪人が定番の悪口からややマニアックな悪口まで、思いつく限り、徹底的に紹介していますので興味のある方は是非ともご覧になって下さい。
どっちか言うたら、いきりというより、いちびりやろ。
(標準語訳:どちらかと言うと、いい格好しい、というより、お調子者でしょ。)
関西人、特に大阪人の感覚としては「いちびり」と言われるのは、そんなに気にならないが、「いきり」と言われるのは結構、カチンとくるかも。
大阪人はお調子者と思われても平気だけど、いい格好しいに見られるのはかなり嫌という人種なのです。
いちびっとったら、いてまうぞ。
(標準語訳:悪ふざけが過ぎたら痛い目に遭わせるぞ。)
吉本新喜劇でも度々、登場していそうな言い回し。
既に相手が怒っている状態なのに、なおもふざけていれば、その怒りの火に油を注ぐことになる。
そんな時に、こういう不穏当な言葉が飛び出すことになるのです。
※「いてまう」という言葉の意味の詳細については以下の記事をご確認下さい。
「いてまうぞ」の意味等について関西弁歴50年の大阪のおとんがコッテリ解説しています。他県民の方にもすんなりご理解頂けるよう、例文を用いて解説していますので、興味のある方は是非ともご覧になって下さい。
いちびりという単語もよく使われるんだね。
いちびるはどこの方言?
いちびるは近畿圏ほぼ全域で使用される方言です。
もともとは大阪、そこから京都・兵庫県南東部などにじわりと広がり、その後、滋賀県西部・奈良県・和歌山県北部などでも使用されるようになったようです。
発祥の地については京都が先という説もあるようですが、上でも触れた魚市場、云々などという語源から考えると、個人的には大阪が先だったのかなとは思います。
まあ、どちらが先でも構ないんですが。
とりあえず本考察では、いちびるは大阪を発祥の地とし、今では近畿圏ほぼ全域で使用されるようなになった方言と結論付けておきます。
「市振る」が語源なら、たしかに大阪が発祥の地っぽいね。
なんと言っても大阪は商人の町だから、魚市場もことさらに賑やかそう。
まとめ
- いちびるとは調子に乗って騒ぎ立てることを意味する。
- いちびるの語源は魚市場の競りなどの騒がしい状況を表す言葉「市振る」。
- いちびるは今では近畿圏ほぼ全域で使用される方言。
ええ格好しないで、申し上げますと私も今回、調査してみるまで、いちびるの語源が「市振る」だなんてこと、知りませんでした。
どちらかというとユーザーである関西人にとっても、ちょっとアホっぽい言葉で、こんなに、まともな語源があるなんて思ってもみなかったのです。
今後は、もう少し敬意を持って、この「いちびる」という言葉を使うようにしたいと思います。
と言っても、まあ、あまり賢い人に向けて使う言葉ではないので、敬意の持ちようもないかもしれませんが。
とりあえず、気持ちの上ではその文化的価値に照らして大事に使うということで。
何、言うてるか、意味不明ですな。(笑)
以上、いちびるという言葉の意味等についてお伝え致しました。
ちなみにいちびるに意味的に近いものとして「ちょける」という言葉もあるんだって。
ちょけるについても、また近いうちに紹介するね。
※当サイトでは「いちびる」以外にも様々な言葉の意味等について紹介しています。興味のある方は是非、合わせてご覧になって下さい。